Illustratorでは、図形のサイズや位置、角度などを数値で指定して作成できます。
長方形や円、線分などは寸法を入力して作図できるため、正確なサイズでオブジェクトを作成することが可能です。
ただし、IllustratorはCADソフトではないため、寸法拘束や設計情報の管理といった機能には対応していません。
本記事では、Illustratorで数値入力を行う方法と、CADとの違いについて解説します。
目次
Illustratorでも数値入力による作図はできる
Illustratorでは、図形を作成するときに幅・高さ・角度・位置などを数値で指定できます。
例えば、以下のような作図が可能です。
- 幅100mm、高さ50mmの長方形を作成する
- 直径30mmの円を作成する
- 長さ200mm、角度45°の線分を描く
- オブジェクトを指定した座標に配置する
このように、Illustratorでもサイズや位置を数値でコントロールしながら作図できます。
長方形ツールでサイズを指定して作成する
長方形ツールを選択した状態で、アートボード上をクリックすると、幅と高さを入力するダイアログが表示されます。
ここに数値を入力すれば、指定したサイズの長方形を作成できます。
例えば、
幅:100mm
高さ:50mm
と入力すれば、100mm×50mmの長方形を正確に作成できます。
チラシや名刺、パッケージデザインなど、決まったサイズのパーツを作りたいときに便利です。
線分ツールで長さと角度を指定する
線分ツールでも、アートボード上をクリックすると、線分の長さや角度を入力できます。
例えば、
長さ:200mm
角度:45°
と指定すれば、その条件に合った線分を作成できます。
CADのように「決まった長さの直線を引きたい」という場合に使いやすい機能です。
変形パネルで後から数値修正もできる
一度作成したオブジェクトも、「変形」パネルを使えば後から数値で修正できます。
変形パネルでは、主に以下の項目を設定できます。
- X座標
- Y座標
- 幅
- 高さ
- 回転角度
- シアー角度(オブジェクトを斜めに傾ける変形)
数値を直接入力できるため、オブジェクトの位置やサイズを細かく調整できます。
例えば、作成した図形を正確に中央へ配置したり、複数の図形を同じサイズに揃えたりする場合に役立ちます。
Illustratorでできること
IllustratorはCAD専用ソフトではありませんが、数値入力を活用することで、正確なレイアウト作業ができます。
正確なサイズの図形を作成できる
長方形、円、多角形、線分などを、数値を指定して作成できます。
特に、名刺・チラシ・ポスター・パッケージなど、印刷物のデザインでは正確なサイズ指定が必要になるため、Illustratorの数値入力機能が役立ちます。
数値で拡大・縮小できる
オブジェクトの幅や高さを指定して拡大・縮小できます。
「この図形を50%に縮小したい」
「幅だけを120mmにしたい」
といった調整も可能です。
オブジェクトを指定した位置へ移動できる
「移動」コマンドや変形パネルを使うことで、オブジェクトを指定した距離や座標へ移動できます。
例えば、
右へ10mm移動
下へ5mm移動
X座標100mm、Y座標50mmに配置
といった操作ができます。
ガイドを使って位置合わせができる
Illustratorにはガイドやスマートガイドの機能があります。
Illustrator ガイド(補助線)を作成する | キャドテク | アクト・テクニカルサポート
これらを活用すると、オブジェクト同士の位置を揃えたり、中心を合わせたりしやすくなります。
デザインのバランスを整えながら、きれいにレイアウトしたい場合に便利です。
遠近グリッド機能で奥行きのある作図もできる
Illustratorには「遠近グリッド」という機能があります。
Illustrator [遠近グリッド機能]奥行きのあるオブジェクトを作成する | キャドテク | アクト・テクニカルサポート
遠近グリッドを使うと、平面的なアートボード上に奥行きのあるグリッドを表示し、そのグリッドに沿って図形や文字を配置できます。
例えば、以下のような表現に向いています。
- 建物の外観イラスト
- 街並みのイラスト
- 商品パッケージの立体的な見せ方
- 看板や壁面に文字を配置する表現
- 奥行きのあるインフォグラフィック
遠近グリッドは、CADのような3D設計機能ではありませんが、パースのついたデザインやイラストを作成したいときに便利です。
Illustratorでできないこと
一方で、IllustratorはCADとは異なるソフトです。
そのため、設計用CADと同じ感覚で使おうとすると、不便に感じる部分もあります。
寸法拘束はできない
CADでは、図形同士の関係を固定する「拘束機能」があります。
例えば、
- 線の長さを100mmに固定する
- 2本の線を平行に保つ
- 円の中心を同じ位置に固定する
- 特定の角度を維持する
- といったことができます。
しかし、Illustratorには機械設計や建築設計向けの寸法拘束機能はありません。
そのため、図形を移動・変形した際に、CADのように関係性を自動で保つことはできません。
パラメトリック設計はできない
CADでは、寸法を変更すると関連する図形も自動的に更新される場合があります。
例えば、
部品の幅を100mmから120mmに変更する
それに合わせて穴の位置も自動で移動する
関連する部品形状も連動して変わる
といった作業が可能です。
これをパラメトリック設計と呼びます。
Illustratorには、このような設計情報に基づく自動更新機能はありません。
図形のサイズや位置は手動で調整する必要があります。
寸法線を設計情報として管理できない
CADでは、寸法線は単なる見た目の線ではなく、設計情報として扱われます。
一方、Illustratorで作成する寸法線は、基本的には線や文字のオブジェクトです。
そのため、寸法線を変更しても図形が自動で変わるわけではありません。
図面として見せるための表現はできますが、設計データとして管理する用途には向いていません。
建築・機械・土木などの設計には向いていない
Illustratorはあくまでデザインソフトです。
そのため、以下のような本格的な設計業務には、CADソフトを使用する方が適しています。
- 建築図面
- 機械図面
- 土木図面
- 電気図面
- 部品設計図
これらの用途では、AutoCAD、Bricscad、Vectorworks、JW-CADなどのCADソフトを使う方が効率的です。
正確な3D設計はできない
Illustratorには遠近グリッド機能がありますが、これは正確な3D設計を行うための機能ではありません。
遠近グリッドは、あくまでパースに沿ってオブジェクトを配置するための補助機能です。
そのため、以下のような作業には向いていません。
- 3Dモデルの作成
- 正確な奥行き寸法の管理
- 立体部品の設計
- 建築物の3D設計
- 部品同士の干渉確認
立体的な見た目を作ることはできますが、CADや3D CADのように設計情報を持ったモデルを作成することはできません。
CADに慣れている人が戸惑いやすいポイント
CADに慣れている方は、Illustratorを使ったときに操作感の違いに戸惑うことがあります。
例えばCADでは、
「X=100、Y=100の位置から、長さ200mmの線を引く」
というように、座標や寸法を基準に作図することが一般的です。
一方、Illustratorは厳密な設計よりも、見た目のデザインや表現を重視したソフトです。
そのため、
- 寸法を基準にした設計
- 図形同士の拘束
- 寸法変更による自動更新
- 設計図面としての管理
といった作業には向いていません。
ただし、IllustratorにはCADにはない表現力があります。
例えば、
- ロゴ制作
- チラシ制作
- ポスター制作
- アイコン作成
- イラスト作成
- パッケージデザイン
- Web用素材作成
などでは、Illustratorの強みを十分に活かせます。
を行うことができます。
IllustratorとCADの使い分け
IllustratorとCADは、どちらが優れているというよりも、目的が違うソフトです。
| 用途 | 向いているソフト |
|---|---|
| ロゴやイラストを作りたい | Illustrator |
| チラシやポスターを作りたい | Illustrator |
| 印刷物のレイアウトをしたい | Illustrator |
| パースのついたデザインを作りたい | Illustrator |
| 商品パッケージを立体的に見せたい | Illustrator |
| 建築図面を作成したい | CAD |
| 機械部品を設計したい | CAD |
| 寸法拘束や設計情報を管理したい | CAD |
| 正確な3Dモデルを作成したい | 3D CAD |
デザインが目的ならIllustrator、設計が目的ならCADを使うのがおすすめです。
まとめ
Illustratorでも、幅・高さ・位置・角度などを数値入力して作図することは可能です。
そのため、正確なサイズの図形を作成したり、指定した位置にオブジェクトを配置したりする作業には対応できます。
Illustratorでできることは以下の通りです。
- 正確なサイズの図形を作成できる
- 数値で拡大・縮小できる
- オブジェクトの位置を数値で調整できる
- ガイドを使ってきれいに配置できる
- 遠近グリッドでパース表現ができる
- 印刷物やデザイン制作に活用できる
一方で、CADのような以下の機能はありません。
- 寸法拘束
- パラメトリック設計
- 寸法線による設計情報の管理
- 正確な3D設計
- 建築・機械・土木向けの本格的な設計機能
Illustratorは、正確なレイアウトやデザイン制作には便利なソフトです。
しかし、設計図面を作成する場合は、CADソフトを使う方が適しています。
- 「見た目を美しくデザインしたいならIllustrator」
- 「寸法や構造を正確に設計したいならCAD」
このように目的に合わせて使い分けると、作業効率が大きく向上します。